麻(ヘンプ)と竹(バンブーレーヨン)を比較する..

ヘンプ(麻、大麻草)と竹を並べてみました。スクスク育つ麻と竹。中からみるとどこか似てますよね。

さて先日、「竹」に関する話ですが、アメリカの連邦取引委員会であるFTCが、「バンブーレーヨン(竹レーヨン)」製品について大きく企業制裁する話がありましたので、ご紹介します。

なんとFTC(アメリカ連邦取引委員会)は、ノードストロームやJCペニーなど4社に対して、竹レーヨンの衣類や寝具を不当表記として、総額 130万ドル(約1億6千万円)もの罰金を科しました。そして、4社は支払いにも合意しています。どういうことでしょうか??

 

◎まず一般的な「竹」衣料品について

麻と竹は、地球対応素材として良く取り上げられる素材です。そのため、『麻(ヘンプ)と竹はどう違うの?』という質問をいただくことが多いです。

・農薬など環境負荷が少ない。投稿を表示する
・成長が早い。
・天然の機能性がある。

というある意味大きな共通項はあります。

ただ、繊維製品として説明するとなると、実は製造方法が全く違うので、一概に比較して説明できない事情があります。どういうことでしょうか。

 

◎竹レーヨンは化学繊維

竹繊維ですが、いま世の中に流通している竹製品は「竹レーヨン」といわれるものです。レーヨンとは、材料となる原料をいったんドロドロに溶かして、そこから細い穴を通すことでつくりだす糸になります。(下記木材を竹に置き換えてください)

レーヨンの製造方法

木材パルプを原料として、パルプの中の天然セルロースをアルカリ(苛性ソーダ)処理した後、二硫化炭素と反応させてセルロース誘導体をつくり、これをアルカリ溶液に溶解させて原液(ビスコースと呼ぶ)とし、この原液を細い孔が多数ある“口金”から酸性浴中に押し出し、繊維を形成させながら化学反応させて、セルロースを再生します。
レーヨンは、このような製法によるため、ビスコースレーヨン、または、ビスコースと呼んでいます。

(引用)一般社団法人 化学繊維振興会(図・文章ともに)

そのため、竹レーヨンは化学繊維に分類されます。このような話を説明すると「キョトン」とされる方が多かったりします。 化学繊維は製造過程で変化(特に、糸の細さ、抗菌・消臭などの機能性を追加する など (注)ただし、後述記事にもあるよう、竹繊維由来の抗菌性ではないことが指摘されていますが)させることが天然繊維に比べると断然思い通りですので、麻(ヘンプ)と比較しようにも単純に比較することができません。

繊維分類表

繊維分類表(レーヨンは「化学繊維」-「再生繊維」に分類)

(引用)全国クリーニング生活衛生同業組合連合会

 

◎竹レーヨン自体は悪くない

ここで、誤解していただきたくないのは、「竹レーヨン」を悪く思っている訳ではありませんことはご理解ください。

レーヨン技術は人類の知恵と工夫の結晶です薬剤は有害でも、環境環境には悪影響を与えないよう、レーヨン工場は多方面にわたり工夫されています。(もちろん、もともと環境負荷は低い方が望ましいですが。)

木材や竹のように、そのままでは糸にできないような原料も糸にできてしまう、ある意味魔法な技術です。硬い竹繊維でも『柔らかく』『シルクのように艶々として』また『ドレープ感にも富んでいる』素材に仕上げられる、そして、大量生産で安価につくれるのはレーヨン技術の賜物です。

ただ、竹レーヨン製品の販売方法において、いくつか疑問に思うところはあり、過去には、このような記事も投稿させていただいております。お時間ありましたら、ご一読ください。今回の制裁と関係しています。

◆竹について思うこと(竹 ≒ 竹レーヨン・バンブーレーヨン ?!)
https://asafuku.net/?p=1830

 

◎今回の制裁内容について

今回のFTC制裁については、12/5 田中めぐみ氏のYahooニュース記事『「竹繊維はエコじゃない」米連邦取引委員会が大手小売4社に罰金130万ドル』に詳述されております。田中めぐみさんは、環境・社会問題研究者としてニューヨークに滞在。サステイナブルをテーマにした執筆・講演・調査・分析をされていらっしゃいます。(田中めぐみさんのWebサイト

記事をご一読ください。

◆『「竹繊維はエコじゃない」米連邦取引委員会が大手小売4社に罰金130万ドル』
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakamegumi/20151215-00052444/
(12/5 田中めぐみ氏著、Yahooニュース)

いくつかの箇所を引用させていただきます。まず制裁の理由について。FTCが2009年に指摘した事項をそのまま引きずっているようです。

  • レーヨンは製造過程で有害物質を使用するうえ大気を汚染するため、原料が何であれ「環境にやさしい」繊維とは言えない。
  • 製品化後のレーヨンが原料である竹の抗菌性(製造過程で使用する物質による抗菌性ではなく)を保持することを証明する科学的な証拠はない。
  • 自治体のゴミ回収など一般的な方法で廃棄した場合、妥当な短期間では土に返らないため、生分解性があるとは言えない。

2010年には小売企業78社に警告文送付2013年にはamazonなど4社には126万ドル(約1億5千万円)の罰金。そして今年、総額 130万ドル(約1億6千万円)の罰金に至っています。止めを刺したようですね。

記事を執筆されている田中さんは、企業や個人がすべきこと として以下のようにまとめられています。

あくまで、バンブーレーヨンを販売することが悪いわけではなく、環境優位性を証明できないにも関わらず、環境にやさしいかのように主張することが問題です。

レーヨンは柔らかく滑らかな風合いに秀でた繊維ですから、堂々と「レーヨン」として販売すれば良いのですし、竹の環境優位性を主張したいのであればバンブーリネンを販売すれば良いでしょう。

繊維としては環境にやさしくなくても、原料の竹が木材よりも環境にやさしいと主張したいのであれば、アメリカでは原料を特定できる場合に限り「竹を原料とするレーヨン」と記載することが許可されています。ただし、この場合も消費者が誤認しないよう、レーヨン生産時の環境負荷を説明すべきでしょう。

環境優位性を計測・証明するのは難しいことですが、少なくとも企業は説明責任を果たすべきですし、消費者もさまざまな問題を学び自分なりの意見を持つべきでしょう。

ちなみに、日本では指定外繊維に分類されています。指定外繊維(竹)、指定外繊維(竹レーヨン)と表示すべきと規定されています。ヘンプも同じ指定外繊維です。指定外繊維(ヘンプ)、指定外繊維(麻福ヘンプ)と表記しています。いま日本ではリネン(亜麻)、ラミー(苧麻)しか「麻」と品質ラベルには書けないのです・・・(家庭用品品質表示法で決められています)。不思議な話ですが、法律で決まってしまったものは、なかなか動かせません。

家庭用品品質管理法

◎日本でも竹由来糸への問題指摘はありました

ちなみに、竹レーヨン糸に関しては、日本でも論ぜられていました。以下は2006年、東京都立産業技術研究センターの論文です。竹繊維ならびに竹レーヨン糸に関する特性が詳述されております。ご関心ある方は是非ご覧ください。

◎『竹繊維の鑑別と消費性能』(クリックするとPDFファイルで表示されます)
東京都立産業技術研究センター報告(池田善光, 小柴多佳子, 吉田弥生, 宮本香, 富永真理子 (2006) 、繊維製品消費科学47)

 

◎レーヨンでない竹繊維「バングロ」さん、頑張っていらっしゃいます

上記ご紹介した過去投稿で紹介した「バングロ」さん。こちらは、溶解していない竹繊維そのものを用いた糸を展開されています。こちらの糸であればFTCからの制裁には絶対に遭いませんね。

d6c86594744bc2cee68943b22f6f99fe

技術的に非常に高いところで展開されていらっしゃいます。是非がんばってほしいものですし、いつか麻福でも取り入れさせてください。

◆バングロとは
http://bambooglobal.co.jp/product

バングロさんの比較表は非常にわかりやすいですので是非ご一読お願いします。

http://www.infobank.jp.net/bamglo/about.php より転載させていただきます。

12354 6

◆(参考・再掲)竹について思うこと(竹 ≒ 竹レーヨン・バンブーレーヨン ?!)
https://asafuku.net/?p=1830

■メールで購読されませんか?
以下にメールアドレスをご登録ください。更新通知をお送りいたします。





関連記事一覧

コメント

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。