アメリカのヘンプ産業状況(市場規模、輸入統計など)を眺めてみた
年始にあたりまして、今後日本のヘンプ市場の動きを予測するために、アメリカ市場の状況をみてみたいと思います。 [円換算は1ドル120円で行っています。]
◆アメリカのヘンプ市場(医療用、嗜好用を除く)
まずの前提として、正確な小売販売金額はつかめないようです。ただ、参考値はいくつかの組織から発表されています。
A)HIA(Hemp Industries Association)のデータ
HIAは、ヘンプ関連企業が集まるアメリカの非営利組織になります。アメリカ有名どころのヘンプ関連企業が多く参画しています。
HIAの発表によると、2014年で6.2億ドル(744億円)の市場があると示されています。食べ物、ヘルスケア品、洋服、自動車部材、建材など。2013年で 5.81億ドル(697億円)とのことですので約7%の成長になりますね。
この6.2億ドルのうち、2億ドル(240億円)が、食べ物、サプリメント、ヘルスケア品だそうです。(同じく2013年計算では1.84億ドルで約8%の成長)
ちなみに、2008年のデータになりますが、服飾(製品、生地)は、1億ドル(120億円)だそうです。
B)Hemp Biz Journalのデータ
ヘンプ産業の経済レポートを発行しているよう。
2014年は4億ドル(480億円)と言っています。2013年比で26%の拡大とのこと。2015年は5億ドル(600億円)を見込むそう。この数値、昨年は様々なニュース媒体でよく出てきました。
HIAと金額(遷移)が異なりますが、この辺は定義(意向)によって大きくブレてしまうと思いますので、現時点、大まかな流れを把握する程度にしなければなりません。
またいずれの発表元の組織も、ヘンプ推進派の方々につき少々大きくみせている可能性があります・・・少し差し引く必要はありそうです。
ただポイントとしては
・何億ドル(何百億円)の市場
・急拡大中の市場
であることは掴んでいただけるかと思います。
◆アメリカヘンプ製品は、ほぼ輸入原料
この急成長するヘンプ市場ですが、この原料、製品は海外から(とりわけ、食品・美容関係は隣国のカナダから、、繊維関係は中国から)輸入してまかなっています。これは日本も同じですね。アメリカもヘンプ解禁の州が年々増えている状況ではありますが、医療用・嗜好用のものであったり、研究用のものであったりで、産業用に栽培・供給している州はまだまだ数えるくらいです。
アメリカのヘンプ関連輸入はどんな状況になっているのでしょうか。
さて、その統計遷移がこちらです。(Hemp as an Agricultural Commodityより引用)
上部分が金額になります。(下部分は数量を示していますが、ここでは割愛します。)
アメリカの貿易統計にはヘンプ関係として6分類あるようで、2013年のデータでみていきます。
1.ヘンプ・シード(Hemp Seeds)
ご存じ麻の実です。粒の状態のものです。アメリカ国内で殻を割ってヘンプナッツにするための粒と想像されます。2013年、約2671万ドル、その8年前の2005年は 約27万ドルですので、一番の成長株です。最近3年でみても、2011→2012年で約2.1倍、2012→2013年で約2倍の輸入増加率です。
2.ヘンプオイル、オイル由来の製品
続いて、ヘンプオイルです。2013年で約226万ドルの輸入です。ヘンプオイルは、食用以外にも、プラスチックやバイオ燃料、また、石鹸やスキンケアクリームなどにも用いられます。2012→2013年では約2倍の輸入増加率です。
3.ヘンプ・シード圧搾残滓
これはヘンププロテイン用の原料、および製品ですね。2013年で、627万ドルの輸入を行っています。2011→2012年で約1.5倍、2012→2013年で約1.4倍の輸入増加率です。
・・・・とにもかくにも食品関係の増加率が目立ちます。これらはほとんど隣国カナダから輸入しています。
4.ヘンプ原料
アメリカ国内での加工用のヘンプ原料。プラスチック用、建築用など。写真のような長繊維状のものもあり、粉砕しているものもあるかと思います。建築用のオガラも入っているかもしれません。2013年で、7.8万ドルとのこと。大まかには繊維原料をしめているような気がします。
(・・・続いて、いよいよ繊維関係!)
5.ヘンプ糸
2013年には約48万ドルの輸入。2000年から上下動しています。
6.ヘンプ生地
2013年は、ヘンプ製品の洋服や生地を約106万ドルほど。こちらも糸と同じく(1996年からですが)上下動しています。
・・・・繊維関係は、上下動を繰り返すようで、、繊維関係の私どもとしては、少し寂しくなるデータでした・・・(ショック)。
ちなみに、お気づきの方はいらっしゃるかと思いますが、上記6分野を合計すると約3687万ドル(44億円)です。下記のような理由は考えられますが、1億ドルにも満たない!?のは少々違和感を感じます。
A.貿易データは、あくまでも商品原価です。アメリカで加工したり、製品の場合は利益を載せて販売するので統計データ金額は小さくなるのは当たり前ですが。。
B.輸入時にこの6分野の商品区分で申請していない場合も想定されます。。(ヘンプ関連の商品区分HSコードは比較的最近に新設された分類コードであり、通関業者に知れ渡っていない可能性もあります。)
ここでも具体的な金額よりかは大きな流れとして掴むしかないようです。そこでグラフにしてみました。
グラフにすると、ポイントがよりわかりますね、、、
・麻の実関連は伸びる!!
・繊維関係は小康状態・・・?!?! (がんばらないと)
この大まかな方向は日本にも当てはまるのではないかと思います。。。いまの日本は、アメリカの2011→2012年にかけた時期と同じ??と感覚的には思います。
◆海外原料より自国原料で(・・それ国として当然)
売れるヘンプ製品ですから、当然の流れとしては輸入より、国内でまかなうのが合理的なことかと思います。
たとえば「4 Financial Predictions of Industrial Hemp Cultivation(産業用ヘンプ栽培による4つの財界予想)」によると下記4つのポイントにまとめた主張がされています。
1.自国の農家が潤う ~自国の農家にお金を落とす~
2.雇用創出 ~失業対策・雇用対策はどの地域も大きな課題~
3.内需拡大 ~わざわざ海外から高いものを買う必要もない~
4.利潤が期待できる成長マーケット ~多くの経済学者や大学機関で報告~
至極まっとうな理由ですね。国として当然すすむべき話だと思いますが、道理にいかない事情が社会にはあるようです。
アメリカは変わりはじめていますが、日本での栽培は難しい状況が続きます。「自国でできる国(他国に提供できる国)」と「できない国(他国から買わないといけない国)・・・特に 日本 」は差が開くばかりのようです。
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