ヘンプ・インナーウェアの保温性 ~”化繊系あったか衣類”と比較する~

ヘンプのTシャツをインナーウェアとして使っている方は大勢いらっしゃいませんか?着用した方は実感できると思いますが「暖かい」ですよね??

その暖かい(保温性を感じる)理由を、ヒートテックなどの「化繊系保温インナー」と比較してご紹介します。

◆ヒートテックの保温性について

ヒートテックの暖かい理由として3つの点が挙げられています(2003年当初のプレスリリースより):

  1. 保温:
    中が空洞の糸を65%使っており、空気層の断熱効果であたたかさを外に逃がさない。
  2. ドライ:
    吸収した汗は、表面積の大きな繊維によって拡散し、すぐに乾くので体の冷えを抑える。
  3. 発熱:
    吸湿性に優れた特殊な綿が、体から蒸発する水分を吸収して熱エネルギーに変換し、素材自体が温かくなる。
    (引用元)http://www.excite.co.jp/News/bit/E1232596583652.html

上記ポイントに対応するかたちでヘンプ素材の保温性特性を説明します。

1の保温に対して・・

これは繊維の多孔質性(微細な穴がたくさん空いている)ことを指していますが、ヘンプの多孔質性も負けません。天然の中空ナノ繊維といえます。

ヘンプ繊維の拡大図。この目盛りが2マイクロメートル(㎛)。 PM2.5の2.5は2.5㎛のナノ粒子ですから、それ以上の穴が確認できます。

ヒートテックの繊維断面はどうなっているか??2011年の新聞記事ですが、0.1mm縮尺の拡大図をみかけました。0.1mmは 100㎛ です。上記縮尺は2.5㎛ですので、ヒートテックより断然多孔質に見えます。(実際の機能性比較は、衣料の保温性試験を通じて行う必要があります。)

(朝日新聞 2011.1.1朝刊付録より抜粋)

ちなみに、なぜ空気が暖かいのか? これはダウンジャケットが暖かい理由と同じ。 空気の熱伝導率性は低く、熱を逃さない性質があります。(後に改めて触れます。)

ヘンプの調湿性(保温)

空気の層に包まれることで保温性が高まります。

 

2のドライに対して・・

これもご実感できますよね。ヘンプの吸汗速乾性は非常に優れています。その理由が、1のヘンプ素材の多孔質性。、微細な穴が空いていることで水が自然と吸い寄せられ、その水分は生地の繊維を通して素早く拡散されます。水分が大きく拡がっていくことで、外気に触れる面積も拡がり、早く乾燥されること(速乾性)につながります。

「毛細管現象」・・・植物が、重力に負けじと水を吸い上げるのは、根の多孔質性(穴)で水分を吸収しているから。穴がたくさん空いているほど、その吸収のスピード(吸水性)も速くなる。

吸収された水分は、どんどん生地上で拡散します。

水滴拡散のイメージ

水滴拡散のイメージ。水滴が拡散されるのが早ければ早いほど(いいかえると、繊維の穴が多ければ多いほど)・・・水の蒸発(乾燥)は早くなります。つまり速乾性が高まります。

 

3の発熱・・

これは「吸湿発熱」効果に関係すること。 もう少し詳しくみてみます。

◆吸湿発熱って??

下記の記事に詳しく解説されています。ぜひ読んでみてください。

◎「発熱」は最初の3分だけ!? 大ブーム“あったか衣料”の真実
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20110113/1034189/?rt=nocnt

吸湿発熱に関する部分を引用いたします。

 水が蒸発するときに周りの熱を奪う現象が起こる。これが「気化熱」だ。夏に打ち水をするとひんやりするのは、気化熱の効果だ。その逆の作用が、水蒸気が水に変わるときに、周りに熱を放出する「凝縮熱」。吸湿発熱はこの作用を利用したもので、人体から発せられる汗などの湿気を取り込み、これを水に変えると同時に熱を発生させる。この熱が温かさと感じられるのだ。

(中略)

【吸湿発熱の仕組み】

吸湿発熱は、水蒸気が水に変化するときに周りに温度を放出する「凝縮熱」を利用した機能。人間は常に汗などの湿気を発しているため、それを吸収することで熱を発生させる

冬においても、特別な運動をしなくても、人は多くの汗を放出しています。放出された汗の水分(湿気)が水に変わるときに「熱」に変換することで人に暖かさを感じさせます。

この吸湿性を高めるためには、細く、また、たくさんの穴が空いている繊維にします。ヘンプは、前項の2でもご紹介したとおり、ナノテクノロジーの化学繊維にも負けない無数の穴が繊維そのものにあり、吸湿性(吸汗性)にも優れ「吸湿発熱」効果にもつながっています。

 

◆化繊系保温インナーのデメリットを補うヘンプ

ヘンプが保温性素材でもあった点、分かっていただけましたでしょうか。さらに、この手の化繊系保温インナーウェアのデメリットとして挙げさせていただくならば、以下の点が考えられます。それが、「速乾性」であり「静電気」です。

◆冬のインナーに大切な「速乾性」

先にご紹介した記事にもあるよう、「吸湿発熱」性は繊維が水分を含んでしまうと効果が低下してしまいます。

発熱効果は最初の2~3分程度

ただし、吸湿発熱素材といっても、湿度を与えれば永遠に発熱し続けるわけではなく、一定量の水分を取り込んだ後は発熱効果がなくなる。もちろん、乾かせば発熱効果は復活するが、一度脱いで乾燥させてから再度着るということは考えにくいので、発熱効果は基本的に着た直後だけということになる。

スーパーなどが販売するPB商品に吸湿発熱素材を提供しているのは、東レや東洋紡といった大手繊維メーカー。それぞれの素材のメカニズムには大きな差はないが、アクリルが多いものや綿が多いものなど、製品レベルでの組成はかなり異なっている。

【どういう効果がある?】

一般的な繊維でも湿度を吸収するときに熱が発生するが、吸湿発熱素材を使うことで3℃程度は温度に差ができる。その後の冷え方が同じなら、一定時間経過後の温かさにも違いが生じる

この手のヒートテック系インナーウェアは、製品によって組成は変わっていますが、この速乾性の影響で議題にあがるのが「レーヨン」素材になります。

こちらの記事をご覧ください。

◎ヒートテックを山岳ガイドが使わない理由
http://rbs.ta36.com/?p=16205

冬山を登るプロ登山者は、ポリエステル系のインナー着用は生死を分けることになりかねない、というある意味衝撃的な記事です。

ヒートテックの素材

各社のインナーを構成する素材に着目し、内容を以下の通りまとめた。はじめにユニクロヒートテックの素材について。ヒートテックは様々な製品が存在しているが、これから紹介するのは一般的なアンダーシャツタイプを掲載している。

ユニクロヒートテックに使われている素材。

  • 34%ポリエステル
  • 34%レーヨン
  • 27%アクリル
  • 5%ポリウレタン

「レーヨン」という素材に着目してほしい。このレーヨンはよくある人工繊維で植物繊維から作り出した天然素材の原料から構成されている。レーヨン自体の特徴としては肌触りが良く感じられる等の利点はあるが、吸水性が高く発汗が大量に行われると「吸水率が飽和」してしまうという欠点がある。

そして「乾くのが遅い」という特性があるのだ。この「乾くのが遅い」というのが外気温の影響で汗冷えを起こし、体温の低下につながる。したがって3割もレーヨンが入ったユニクロのヒートテックは、特に汗を多くかくスポーツ、体温の低下が生死を分けるようなシチュエーションで使うのに適していないのだ。

レーヨン素材は、肌触りよくはなりますが、吸水性は良けれども乾燥しにくい繊維特性がありますので、とくに冬に汗をかくときは避けていただいた方が賢明かと思います。

ちなみに、竹が原料のレーヨンでも同等のことがいえるかと思います。
(参考)麻(ヘンプ)と竹(バンブーレーヨン)を比較する..

 

◆冬の大敵「静電気」

ポリエステル系の衣類で気持ち悪いと感じる理由について、静電気が理由となる場合があることを挙げさせていただきました。一度ご一読ください。

◎ヘンプ(麻)で静電気対策。静電気除去・生活のススメ
https://asafuku.net/?p=3475

1.ヘンプ(麻)は中性素材

肌と同じように、繊維素材にもPh(ペーハー)値があります。

下記のような表をご覧になったことはありませんか。

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素材の帯電表になります。この互いの物質の距離が遠くなればなるほど静電気を発生させやすい組み合わせになります。

たとえば、フリース(ポリエステル、上図で左から4番目) と ウールセーター(上手で右から5番目)の組み合わせ。それぞれ互いに離れていますので、これは強烈な静電気を引き起こしてしまいます。

麻は「中性(Ph7前後)」。人の肌も同じ「中性」です。

中性な素材=ヘンプは、どの素材と合わせても比較的差が小さいので、確率的にも静電気を起こしにくい素材といえるかと思います。

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話は少し変わりますが、ポリエステルの下着(保温インナー)を着用して気持ち悪いと感じる方いらっしゃいませんか??この理由のひとつには静電気があるかもしれません。

中性である「人の肌」と「ポリエステル」は微妙に離れていますよね。肌と摩擦されることに静電気を発生しやすい素材といえます。

ポリエステル(Ph-)とナイロン(Ph+)で構成されている化繊系保温インナーもあるようですが、これは「静電気を発生させるインナー」ともいえ、さすがに避けた方がよさそうです。

 

◆さらに暖かく感じるために

さらに保温性をもたせるために、、起毛加工というのがありますね。「裏起毛インナー」・・今年の冬も人気アイテムでした。

麻福でも、リクエストにお応えするかたちで、今年に入ってから裏起毛の長袖Tシャツを販売しています。遅い時期になってしまいましたが。

◆ヘンプ長袖Tシャツ

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◎【日本縫製品】ヘンプ 裏起毛 長袖Tシャツ
http://asafuku.jp/SHOP/A0147-1.html

◎【日本縫製品】ヘンプ 裏起毛 七分袖Tシャツ
http://asafuku.jp/SHOP/A0138-1.html

 

◆ヘンプ生地を起毛するメリット

生地の「起毛」とは、そもそも、生地の表面を細かい針でひっかいて、毛羽(ケバ)を出す加工のことを言います。(紙やすりで行う場合もあります。)これにより、布の表面が細い繊維で覆われ、その毛羽の中に空気の層ができるために温かみ(保温性)が出ます。生地もより肉厚となって肌触りがぐっと良くなります。

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起毛機械(中央ドラムに無数の針が刺さっていて、これを回転させます) 出展:Textile Net http://www.textile-net.jp/texblog/?p=766

 

空気の熱伝導率は低い。つまり、熱を通さないために保温性につながる。ダウンジャケットが温かいのは多量の空気を含むため。 [出典]佐々木化学薬品株式会社

 

熱伝導率の比較値 (空気を0.2とする)
羊毛  0.37 オーロン  0.40
絹   0.44 中空・スフ  0.39
綿   0.54 レーヨン・スフ0.46
麻   0.63 レーヨン   0.58
ナイロン  0.38

 

起毛効果でもっと暖かく、、そして、ヘンプ素材なので、「吸汗速乾性」あり「静電気はおこしにくく」最高のインナー素材になったのではないかと思います。

国内縫製品。1着1着を丁寧に縫製しています。まだまだ長袖が活躍できる時期です。今年分は残りわずかですが、おひとつお試しになりませんか。

◎【日本縫製品】ヘンプ 裏起毛 長袖Tシャツ
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