ヘンプ糸、生地が高くなる7つの理由
ヘンプ糸・生地はもともと安いものではありませんが、ここ数年でグンと値段が高くなりました。
本日は、こんなヘンプ糸・生地にまつわる苦渋な状況について、ご紹介いたします。言い訳じみて恐縮ですが、よろしければご一読ください。
1.インフレ(物価高)、人件費高騰...
日本のヘンプ糸自給率は1%未満(機械紡績では0%かと・・)ですので、糸・ないしヘンプ原料となる繊維は海外に頼らざるを得ません。麻福では、高品質のヘンプ糸をつくっている中国工場から仕入れております。
ご存知のとおり、中国は「高いインフレ率」「高騰する人件費」等の事由により、原料費そのものが年々上昇しております。結果、ヘンプ糸・生地にも上昇分が加わっています。
2.為替の問題..
2012年10月頃までは 1ドル=80円頃でしたが、本日は1ドル=102円です。1ドル=80円の頃は 10,000円で125ドル分が買えましたが、今では98ドル分しか買えません(22%減)。
貿易はドルでやることが一般的ですが、「ドル」と「元」のレートも日本にとっては不都合になっていました。いわゆる「元高ドル安」です。
2010年7月頃までは1ドル=6.8元 でしたが、本日は1ドル=6.1元です。 つまり、中国工場側で 1000元の商品をドル建てで販売しようとすると、1ドル=6.8元のときは147ドルでしたが、現在だと 163ドル が必要です(10%増)。
2010年7月頃から比べると、円安ドル高 と 元高ドル安 の為替Wパンチで30%以上の原価アップになっております。
3.輸送費高し...
石油相場が高くなっていることに相まって、国際輸送にかかる送料は値上がりの一方であります。しかも国際物流に関わる送料は通常ドル建てなので、前項のとおり為替要因でも原価アップです。
4.原料不足 ~農家の栽培意向~
これは切実な状況です。
もともとヘンプを栽培していた農家が、他の植物の栽培に乗り換える例もあります。農家も人の子、お金が大事です。ほか植物を栽培した方が割が良いと判断した場合には乗り替わってしまうことも珍しくありません。 特に、各地域における農業支援制度の関係で、乗り換えることもあるようです。もちろん、地域によってはヘンプ栽培に補助金を出したり、高く買い上げたりしている地域もあります。
さらに、ヘンプ紡績は他素材に比べても難しく、特に高品質の糸をつくるためには、その原料となるヘンプ繊維への品質要件が厳しくなります。これが農家にとってやる気を失わせる原因となってしまう場合もあるようです。
5.生産会社が少ない
4にあるように、ヘンプ紡績はなかなか難しいです。原料確保に併せて、糸つくるのも難しいヘンプ。量産化・高品質化のためにも最新鋭の機械を導入したりしながらヘンプ専門のラインをつくる必要があります。したがって取り組む会社は中国でも数社。競争が働かないので価格が高止まってしまう、という事情もあります。
(8/20 16:00追記)
あと、糸・生地の原料を取扱いしている会社が少ないことにも理由があります。
あまり世の中に流通していない素材だけに、調達にあたっては商社・卸問屋経由となることが多数。どうしてもその分割高になってしまいます。(麻福では、直接原料工場から調達を行うことで中間コストをカットするようにはしていますが、貿易には想定外のトラブルがつきものだったりします。)
6.ロットの問題..
生地の生産ロットは1000mでも少ない方です。もともと高価な生地でもあり、大量注文するには、かなり周到な計画が必要です。できるかぎり多くの発注とするべく、生地単体で販売したり、他企業と相い乗りしたり、工夫が要ります。。(生地売りを行っているのも注文ロットを増やすための施策の1つです)
7.生地のカット工数..
生地はロール状になっております。生地は150cm程あり、これが50mくらいになると直径20cmは超えます。ロール重量も20kgくらいあることもザラ。2人がかりでやっておりますが、結構大変な作業なのです。生地カットにかかるコスト、また、出荷まで少々お時間いただようお願い(ご注文後2営業日以内発送)しているのも、この辺りの事情があります。
リネン、ラミーとの比較
ちなみに、日本では麻 とされている「リネン(亜麻)」「苧麻(ラミー)」は、世界的にも工業化が進んでおり、ヘンプに比べて原料費は抑えられます。
また、糸・生地を生産している工場が多い、ということは、在庫品などもヘンプに比べれば断然と入手しやすいです。
しかも、工業化が進んでいる=糸の品質も安定しているため、次工程の工場(生地工場など)にとっても、ものづくりが行いやすい、という構図もあります。
そういう意味では、ヘンプはまだまだマニアックな存在となりそうな見込みです。
困難だけど、、
いかがでしたでしょうか。大手のアパレル会社がやらないのも上記事由などによる高コストから諦められることが多いと想像します。
当面としては、世の中にヘンプ素材の価値を理解してもらって、需要を増やして生産量を増やしていくよう、努めていくしかありません。
工場にとっては、ある程度のボリュームで、定期的に案件があることが喜ばれます。小ロットだと採算がとれないし、一過性な注文でも嫌がられてしまいます。
原料供給の会社がなくなれば終わりです。川上となる企業と相互発展していくためにも、やはりボリュームを挙げていくことが必要だと思います。
そんな訳で、ヘンプ原料がなくならないように、ヘンプ衣料を絶やさぬためにも、皆様のご支援ご協力よろしくおねがいします。
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コメント
コメント ( 2 )
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初めまして。
最近、ヘンプの良さを知り生地を姉妹店の麻織さんで購入しました。
中国以外では栽培してる国はないのでしょうか?
中国は食品にしても「色々とある」ので、なるべく中国産商品は使いたくないのがホンネです・・・・
お問い合わせ、ありがとうございます。
衣料用のヘンプ栽培というと、中国以外ではイタリアのものをよくききます。ただ、このイタリアの糸の原料も、中国のものではないかと思われます。。<糸をつくる前の原料(スライバー)を中国から仕入れて紡績している。>
その形式であれば、日本でも一部糸をつくっている工場もあります。
ただ、大元のヘンプ繊維(さらにいうと 糸をつくる前の原料=スライバー)は中国に頼らざるを得ないのが世界の状況ではないかと想像します。(スライバーをつくるには、多量の原料と、ある程度の専門加工施設が必要にもなります)
当社の商品は、中国のものでも、衣料用途としての安全性には留意しておりますが、どうしても気になる場合は、使用前に洗っていただければ と思います。
衣料の場合は、食品などと違って、洗うことができます。日本産のものでも、中国以外のものでも、使用前の洗いだけで、、大部分の想定される衣料用品のリスクはずいぶんと減ります。
回答になっていないかもしれませんが、中国とはうまく付き合いながら、気になるリスク部分は予め留意・対策をとりながら、対応をとっていくしかないかと思います。とくに衣料用途においては、ですが。