ヘンプがスーパー蓄電装置に!?「ヘンプ炭素シート」がつなぐ明るい未来

近い将来、『ヘンプの蓄電装置(≒バッテリー)』を積んだ携帯電話や電気自動車が世の中で活躍する日がくるかもしれません。。。

BBCニュースから、超高性能バッテリー「スーパーキャパシタ」の重要な材料である「グラフェン」よりも「ヘンプ繊維」のほうが優れているかもしれないというニュース記事が飛び込んでまいりました。

■Hemp fibres ‘better than graphene’(BBCニュース)
http://www.bbc.com/news/science-environment-28770876

聞きなれない言葉が多数並んでおりますが、『これはスゴイことに違いない!』と思い、当方でがんばって調べた内容をご紹介します。詳しい方がいらっしゃいましたら、補足(誤りあれば指摘)いただけますと嬉しいです。

 

●スーパーキャパシタとは?

スーパーキャパシタ

マツダ車に利用される スーパーキャパシタ

まずは、「スーパーキャパシタ」については以下をご覧ください。

また、スーパーキャパシタは重金属を使用しないため環境への負荷が少なく、資源枯渇の心配もないことも注目される理由に挙げられます。(詳細記事:「炭素とアルミと塩水でも作ることができる」)

 

スーパーキャパシタ の課題は?

この素晴らしい「スーパーキャパシタ」ですが、デメリットもあります。大きな課題がこの2つ。

A.蓄電量が少ない

B.高い

これらを象徴する分かりやすい事例として、『一般的なスマートフォンに使われている3.7V・2,000mAhのバッテリーをスーパーキャパシタで再現するとどうなるのか?』を検証した記事があります。

■30秒で電池を充電できる?「スーパーキャパシタ@25,000円」
http://woman.mynavi.jp/article/130904-076/

なんと! 45万円必要との結果が..!!

とにもかくにも、蓄電量を増やしつつリーズナブルな価格にしていくことが要求されている訳です。

 

グラフェンとは?

現行の「スーパーキャパシタ」の性能には、「グラフェン」という素材が鍵を握っています。

スーパーキャパシターにはグラフェンを用いる

(転載)グラフェンスーパーキャパシター(独立行政法人物質・材料研究機構)

「グラフェン」とは、原子レベルの薄さで結合した非常に薄い炭素のシートのことです。グラフェンは「次世代ディスプレイ・半導体・太陽電池」などに応用できる夢の素材とまで期待され、世界中で研究が行われています。

「グラフェン」のイメージ図(丸いのが炭素原子)

このグラフェン、なんと鉛筆の芯の材料(黒鉛)からつくれるそうです。

グラフェンは鉛筆から

(転載元)炭素原子が1原子厚さで蜂の巣状に結合した構造

炭素1つから構成されます。ちなみに、炭素1つのサイズは1000万分の3メートル((≒0.3nm:ナノメートル))だそうです。

グラフェンの科学(静岡大学名誉教授 相原 惇一著)』よりグラフェンのメリットを以下のとおり引用させていただきます。

(1)現在知られている物質のなかで,室温の電気伝導度と熱伝導度が最大である。電子の移動度が最も大きい物質の1つで,電子移動に伴うエネルギーの損失がごくわずかであるので,配線材料や放熱材料として最適である。

(2)現在知られている物質の中で最も軽く,最も丈夫な物質である。同じ厚さの鉄のシートに比べて約 100 倍もの強度があり,1m2 のグラフェンシート(0.77 mg)でハンモックをつくれば,約4kg のネコを支えられる勘定になる。
また,適当なプラスチックにグラフェンを混入すると,強度の大きな導電性プラスチックが製作できる。

(3)単層グラフェンは,可視光に対してほぼ透明(透過度 98%)なので,液晶パネル,タッチパネルなどの透明電極として利用できる。

(4)半導体グラフェンは,シリコン(ケイ素)をしのぐチャネル(電子の通路)材料として,超高速トランジスタや高密度集積回路の製作に利用でき,すでにいくつかの試作品も報告されている。

このグラフェンは2004年に発見され、発見者のガイム氏、ノボセロフ氏は2010年にノーベル物理学賞を受賞しています。

グラフェンの層(枚数)を増やし・表面積を広くすることが、より蓄電量を増やしていくのにポイントとなるそうです。

グラフェン層・イメージ

 

●「ヘンプ」から高性能なグラフェン状のシートの開発に成功!

そんな中、カナダのアルバータ州立大学の研究グループが、ヘンプ産業の廃棄物を利用し、ヘンプ繊維からグラフェン状の炭素シートを作ることに成功したそうです。

そのつくり方はこうです。(非常にざっくりですが)

ヘンプ炭素シートの製造法

ヘンプ繊維を24時間にわたって180度の熱水に浸し水の中で圧力を加える。ヘミセルロースとリグニンを取り除くようです。そして、水酸化カリウムに晒して「炭素シート(10~30nm厚の無数に穴が空いた炭素シート)」を作り出す。

(参考)
Who Needs Graphene? Canadian Engineers Are Making Nanomaterials From Hemp
Hemp-derived carbon nanosheets help build cheap, high-performance supercapacitors

こうしてつくったヘンプ炭素シートをグラフェンの代替としてスーパーキャパシタに利用。その性能が通常のグラフェンとほぼ同等との試験結果が出たので、大きなニュースになった訳です。

たしかに!! この技術が商用化されれば凄まじいインパクトがあります!!!

 

●なぜヘンプ繊維が良かったのか?

ただ、この「ヘンプ炭素シート」は、必ずしも「グラフェン」と同じような分子構造にはならず、しわくちゃで穴が不規則な形状になるようです。

グラフェンの分子構造

ヘンプ炭素シート

ただ、この形状が、逆にスーパーキャパシタ最大のデメリットである、蓄電容量を増やすことに貢献できるかもしれない。つまり、シートを重ねた時に各層が密着することを防ぎ、表面積を広くすることにつながるかもしれない、と。(表面積が広いほど蓄電量が増えるため)

 

●ヘンプ繊維(生)の多孔質性とグラフェンの原子分子サイズを較べてみる

下図はヘンプ繊維の拡大写真です。

ヘンプ繊維(縮尺線(2μm)の 6666分の1が炭素原子サイズ)

粒上になっているのは、無数の穴です。この穴がたくさん空いていることを「多孔質性」と呼びます。

ヘンプは、植物の中でも最高レベルに多孔質性に優れています。

2μm縮尺線をご覧ください。髪の毛が80~200μmなので、その30~40分の1の細さになります。2μm線で 100万分の1メートル。1μm=1000nm(ナノメートル)なので、2μmは2000nm。グラフィンの炭素原子1つが約0.3nmなので、2μm線の6666分の1のサイズが炭素原子1つの大きさになります。

んーん、この写真ではわかりませんね。。。ただ、生の繊維状態で、これだけの多孔質性を誇っています。しかるべく加工すればたしかに可能性はありそうです。

 

●明るい麻の未来も待っている

この技術では通常廃棄されるヘンプの繊維・靭皮の屑などを利用できるそうなので、非常に安価に、また無尽蔵に製造できる日がくるかもしれません

グラフェンを使用したスーパーキャパシタは非常に高価で蓄電量も少ないですが、今回のこの研究結果(=ヘンプ炭素シート)によって、高性能スーパーキャパシタが安価に製造できる可能性が生まれました。ヘンプ業界にとっても更なる大きな未来ができたといえましょう。

この動向に目が離せません。

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