米・トランプ氏が「未来のヘンプ衣料品業界」に与えるかもしれない影響について

米・大統領選でトランプ氏が当選しましたね。

トランプ氏が公言している政策が実行に至ったとしたときのヘンプ、とくに、ヘンプ衣料品への影響について簡単ですが考えてみました。まだ新政策として決定している訳でもありませんので、もしかして・・との参考程度にご一読ください。

保護政策

トランプ氏が掲げる政策として大きいのは「保護政策」。とくに、TPP撤廃、NAFTA(北米自由貿易協定)見直し、海外からの輸入品に対して関税をかけていく、ことを公言しています。

日本の自動車業界も慌ただしくなっていますね。。

◎「トランプ・アメリカ」、日産やトヨタら日本企業に与える影響
https://www.digima-news.com/20161110_9173

また中国に対しては、45%の関税をかけるとの話も。。貿易戦争となってしまうと世界大不況にも入っていきそうです。。

◎中国にも「トランプ・ショック」、対米輸出45%減の恐れ=エコノミスト試算
http://news.mynavi.jp/news/2016/11/10/294/

保護貿易、内需主導の政策は、ヘンプ業界にとって追い風となる部分もあるでしょうが、ヘンプ衣料品でみてみれば世界的に大きなインパクトを与えかねない、と少々不安視しています。

【注】以下は、保護政策(自国経済活性化)の観点でみています。政策決定には様々な利害関係が関わりますが、単純化しております点を予めご容赦ください。

医療用・嗜好用

大統領選挙と同じ11/8。アメリカ5州で嗜好用の合法化を巡る国民投票が行われました。そのうち4州が嗜好用を合法化とすることに決定。カリフォルニア州やニューヨーク州で決定したことは大きなインパクトですよね。

トランプが勝つというショッキングな結果に呆然としていますが、その一方で、大麻の合法化をめぐる住民投票では素晴らしい結果が出ています。

● 医療大麻合法化

アーカンソー州  → 可決
フロリダ州    → 可決
モンタナ州    → 可決
ノースダコタ州  → 可決

● 嗜好大麻合法化

アリゾナ州     → 否決
カリフォルニア州  → 可決
メーン州      → 可決
マサチューセッツ州 → 可決
ネバダ州      → 可決

つまり、住民投票のあった9州のうち、否決されたのはアリゾナ州のみ。これで、医療大麻が合法な州は 29州とワシントンDC、医療大麻に加えて嗜好大麻も合法の州が8州になりました。中でもカリフォルニア州で嗜好大麻が合法化されたのは大事件ですね。

先ほど池上彰が司会の報道番組で大統領選について解説しながら、同日行われた色々な住民投票についても説明していましたが、大麻の合法化については素通りでした。日本のマスコミはこの大事件を無視するつもりでしょうか。みなさん、どんどんこのニュースを拡散しましょう!

すごいですよね。。

日本のニュースではあまり報道されていないようですがが、NHKでは昨晩ニュースで報道されたのは評価すべき点。

◎【映像あり】米 大麻合法化問う住民投票 7州で賛成が上回る(NHK 11月11日 0時26分) 
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161111/k10010764481000.html

この流れは止まらないでしょう。トランプ氏は、もともと「医療用途」には一定の理解をしているようですし、州法が強いアメリカで、これだけの合法化の動きがありれば、今後益々もって医療用途・嗜好用途としての動きがアメリカでは拡大していくことかと思います。医療・嗜好の用途は、自国内での栽培を前提としているところが多いので、地産地消・自国経済の活性化、観光振興、税収拡大にもつながりますし、アメリカ自国民の世論も後追いに、なんだかんだ拡大していくことでしょう。

【注】あくまでも保護貿易観点な個人的観測です。トランプ氏周辺にはマリファナ合法化に反対する人々がいるとの話もありますが、著者にはそのあたりの情報を持ち合わせておりません。いま米国業界でも出方を伺っている模様です。
実態については、こちらの投稿もご参考ください。
https://www.facebook.com/180695211961214/photos/a.587803717917026.1073741825.180695211961214/1308730035824387/?type=3&theater

産業用ヘンプは?

医療用・嗜好用が広がれば、薬用成分が含まれていない「産業用ヘンプ」の栽培はもっとハードルが低いことに思います。(2014年時点のデータで恐れ入りますが、)2014年で19州で認められており、8州が積極利用しようとしています。

◎アメリカの産業用ヘンプ(大麻) の現状 2015年(asafuku.net)
https://asafuku.net/?p=2436

産業用ヘンプ製品の市場拡大中。とくに、食品の流通高がうなぎのぼりです。ただ、これらの原料は日本と同じように、海外輸入に頼っています。

◎アメリカのヘンプ産業状況(市場規模、輸入統計など)を眺めてみた
https://asafuku.net/?p=3460

アメリカの貿易統計 を参考に作成

<食品用途>

食品の輸入は、主に隣国カナダから。アメリカがNAFTA撤退となれば、アメリカが、カナダからヘンプ食品を輸入する際に、大幅な関税がかかり、原価が上がります。その原価は販売価格に転嫁せざるを得なくなりますので、アメリカのヘンプ食品相場はぐっと上がって短期的には流通量が減ってしまうことが想像されます。

ただ、それを市場参入機会とみて、アメリカ国内での栽培からの一貫生産でヘンプ食品市場に参入する会社は増えていくかもしれません。

カナダのヘンプ食品業界にとっても、隣国アメリカ向けの販売は大きな販売先なので、日頃の動向を注視していることと思います。

<衣料品用途>

ヘンプ衣料品については、これは、中国からの輸入に頼っています。アメリカ国内にはヘンプ糸紡績の技術も生産工場もありません。日本、というか、あらゆる世界のヘンプ衣料品の原料・糸づくりのための繊維加工は中国が握っていると言っても過言ではないと思います。

ヘンプ糸紡績(とくに衣料品に用いる細い糸)は、ヘンプ特有の生産工程が必要ですし、また、大きな繊維ロス(糸になるのは10~20%くらい。あとは繊維ロスになる。)が発生します。さらに、手間暇かかるヘンプ糸づくりには相応の大規模生産設備が必要となり、その工場を安定的に稼働させるための沢山の繊維原料が必要となります(少ない繊維原料では工場の生産ラインが稼働できない)。

そのため、現状はヘンプ繊維原料が豊富な中国が鍵を握っています。イタリア製糸といっても中国の繊維原料が頼りだったりしています。。(ただし、アクセサリー用の太い糸は自国内ヘンプ原料でやっている例もあります。)

トランプ氏は、中国からの輸入には45%の関税をかける、と言っています。繊維製品も対象になるのか詳細は不明ですが、もし、これだけの関税がヘンプ原料にもかかるとすれば、、、ヘンプ衣料品の相場は大幅に上がることが想像されます。関税45%かかれば、その販売価格は最低でも2倍をつけざるを得ないことになりましょう。。。

そこまで高くなったヘンプ衣料品は販売量は激減するでしょう。需要も低下します。

対する、中国のヘンプ糸・生地の生産工場にとっても、なんだかんだアメリカ向けの販売に頼っているところがあります。アメリカ会社が安定的に大量に買ってくれるので、、製造が難しくてややこしいヘンプ糸工場も継続生産している現状がありますし、日本からの細かなオーダー(私どもですが・・)にも対応してくれる背景があります。

このアメリカ向け需要が大減少するとなると、、、、工場も生産縮小していくことになるでしょう。さらに、繊維原料需要が少なくなり、農家からの繊維原料買い付け相場も安くなってしまうと、ヘンプ繊維原料を供給する農家も他作物に変えてしまうことになるかもしれません。

一度やめてしまう、生産中断してしまう、、その復活には大きなエネルギーが必要となり、復活には困難を伴います。まして農家が栽培をやめてしまう、、、、、と、もはや復活は絶望的にも思います。。。

食品と異なり、ヘンプ糸の紡績は簡単なことではありません。技術、そして、大きな生産工場施設が必要です。アメリカは、すでにコットン栽培は盛んで世界中に輸出していますので、政府としてもヘンプ糸紡績に投資することもないでしょうし、、食品以上に採算厳しいヘンプ糸紡績に企業が参入することも考えられません。

となると、、、世界的なヘンプ衣料業界大混乱、業界不況に。。事業継続に関わる悪夢です。

今後どのような政策がとられていくのか、ヘンプ衣料にかかわる身としも、動向が気になります。

 

※冒頭の写真は以下サイトより拝借しました。
https://www.merryjane.com/news/want-marijuana-legalized-then-donald-trump-is-your-best-option

 

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